醍醐味がわかってきた。
盆栽の話です。
5月も中旬となり、うちのヒノキもそろそろ適期を迎えました。
そう、盆栽のサイクルの中でも大きな楽しみである事。
剪定の時期です。
暖かい日や夏のように暑い日をいくつも乗り越え、新芽が出たり枝が伸びたりで、すっかりボサボサになったうちのヒノキ。
今はこんな感じになっていました。
ボサボサというか、モコモコというか。
ヒノキはこのモコモコ感がかわいいという見方もできます。
ですが、無造作に葉を増やすだけでは、やはり見栄えもよくありません。
そして、根も幹も成熟しきっていないうちにただ闇雲に葉を増やしては、栄養が行き渡らなくなってしまいます。
なので、ここは思いっきりいきます。
こいつでもって。
植え替えで根っこを切った時以来の登場ですね、盆栽ばさみ。
これが最初に切った枝。
なかなか緊張します。
慣れないうちは、それが切っていい枝なのかという判断も難しいんですね。
でも、切り始めるとだんだん自分の"作りたい形"というものが見えてきて、どこを切るべきかが明確にわかるようになりました。
そんなこんなで1時間以上もの間、はさみを持って盆栽に向き合った結果。
こんなに切りました。
思い切りが大事です。
そして、切った後の姿がこちら。
だいぶ印象が変わりました。
ヒノキの魅力の一つは、モコモコの葉である事は間違いないですが、それだけではありません。
やはり盆栽は、幹肌や枝振りも見せてこそだと思いました。
そこで、幹を隠してしまうような枝と、枝の根元から伸びていた葉を切り落としました。
あとは、葉のモコモコ感はあくまで一つ一つの枝から分岐したものが織り成すべきと思い、別の枝から伸びた葉っぱ同士で干渉しているのは美しくないと判断し、これも落としました。
そしてシルエットは、円錐をイメージ。
ここは買った時から決めていたところです。
これはまだ途中の段階ですが、上から見てもだいたい均等になるように形を整えました。
そして、見る角度によっては枝の根元もちゃんと確認できます。
盆栽全般、個人的にはこの枝分かれの部分が好きだったりします。
少し下から覗くと、若いながらも古木感のある幹肌と、枝の根元を拝む事ができます。
この幹肌もヒノキの特徴の一つですね。
若いのに迫力があって好きです。
"後ろ"から見ると、こんな感じ。
そう。
樹に前も後ろもないのでは?という感じですが、盆栽にはそれがあります。
それはオーナーが決める事なのですが、その盆栽の見どころ(見せたいところ)を把握し、そこが一番見せやすい向きというのが"前"となるのです。
ちなみに、この子を買ったお店の女性はそれを「盆栽の顔」と仰られていました。
後ろから見た枝分かれのところも、なかなか味があります。
この子も、今まではただ「小さくて可愛い樹」というぐらいの認識でした。
それがこのように、幹肌や枝振り、それを前から上から下から後ろからと、いろんな見方で楽しめるようになった事で、ようやく盆栽の楽しみ方がわかってきた気がします。
この小ささでも、それを十分に味わう事ができるんですね。
思えば、盆栽博物館で見た盆栽が、どれを取っても初心者の自分があれだけ熱心に見入ってしまったのは、その見せ方の上手さがあったからなんでしょうね。
あの見事な盆栽と同じような見方が、家にあるこの小さな盆栽でもできるようになったんです。
これは、今まで以上に見入る時間が長くなってしまいました。
そして、「見たい」「見せたい」形を作るという、観葉植物とは少し違う楽しみ方。
これは模型に通ずるものがあると感じました。
盆栽家がはさみを持ったまま考え込むのは、その樹の未来を思い描いているんでしょうね。
この日は、それが自分にも見えた事で理解できました。
盆栽は老後にやる地味な趣味というイメージがあるかもしれません。
でも、子供の頃に雑木林で「あの枝ねじれててなんかすげえ」とか「あの枝の形、登りてえ」とか思いながらぼんやり樹を眺めていた事がある人ならば、きっと誰にでも理解のできる間口の広さがあると思います。
自分自身、基本的にはその時と同じような気持ちで向き合っています。
これは本当に面白いですよ。
さて、秋にかけて剪定を続けますが、思い描いた通りの形ができるのを今から楽しみにしています。
変化があったらまたアップしたいと思います。
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